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吼える月
第27章 再来
イタチがサクに危機を告げなかったのではなく、自分がイタチの危機を気づけなかっただけなのだと、己の非力さを悔やみつつ、必死にイタチに答える。
「イタ公、俺は帰ってきている。すぐ上にいるぞ!?」
"小僧……?"
「そうだ、俺だ!! 今行くからな、気を確り持って待ってろよ!!」
"間に合わぬ…"
イタチが言った。
"だから、その力を……我らに放て"
「はああああ!?」
"我を信じて、我らに放て"
「信じて放てってなんだよ!!」
「お兄さあああん、ゲイが……金に光る手をこっちに向けたよ!!」
"小僧……"
「なんで助けに来て、攻撃しないといけねぇんだよ!! 助けにきたんだから、生きることを諦めるなよ!! 俺にそんなことさせるな、生きろ!!」
「お兄さん、危ないよ、お兄さんっ!!」
"神獣は……、その力では滅びぬ"
「イタ公滅びなくても、姫様達が滅んでしまうじゃねえか!!」
"我は玄武。我の力は、我が守るものには…危害を加えられぬ。我、神獣の特質なりて……我の力は…我は、吸収するゆえに……この結界を…"
「――っ!! 結界増強に俺の力が欲しいなら早くそう言えよ……っ」
"いや、それは我の力で……"
「俺のだよ、俺が親父から貰った力だ!!」
"だから、元はといえば……"
「ああ、うるせぇ!! だったら間とって"ふたりの力"だ!!」
サクは両手に玄武の力を集めて、イタチの力を感じる場所に手のひらを向ける。