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吼える月
第27章 再来
"小僧…、真向かいに……立て"
サクのおかしな妥協案には完全無視の方向で、何の真向かいかはぼかしていながらも、サクはイタチの意向を汲み取り、盛上がった海の後方、ゲイの真向かいに鷹を動かす。
鷹は驚きに目を大きくさせるが、上に居座るサクが動じないのを悟り、半ば諦観したように、できるだけその場に留まるように羽ばたいて、サクに協力する気のようだ。
「本当に、人使い荒い玄武だ。俺を完全に囮にする気か。これでうまくいかなかったらどうすんだよ」
懐疑的な物言いながらも、サクは集中して力を集める。
"失敗は…許されぬ。いいか、小僧…。大量の力を出すには……"
「武術ならまだしも、力の放出は素人丸出しなのわかっているくせに、目一杯煽るんじゃねぇよ。具合悪いなら黙って、俺を信じてろ!!」
「お兄さん、金色、来た――っ!!!」
"まだだ…、まだ、まだ…まだだぞ、まだ……"
「だから――」
"まだまだまだ……今だ、思いきり、我の力を……"
「黙ってろって言うんだよ!! 気が散る――っ!!」
サクの焦躁と怒りが、怒濤のように…体外へに迸(ほとばし)った。
力の放出に感情をなぞらせることは、シバの方法と種を同じにしていることを、サクは知らない。
「いっけぇぇぇぇ!!」
シバが放つ以上の多大な水色の光が、盛上がった部分に向かう。