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吼える月
第27章 再来



 ◇◇◇



 金に煌めく光は、ユウナの記憶から惨い記憶を呼び覚ました。


――お父様ああああ!!

――リュカああああ!!


 なにより、サクの目の前で処女が奪われた。

 リュカのものを自分は口で奉仕した。


 サクを愛する今となっては、サクを助けるためだったとはいえ、そのことがどうしても悔やまれる。


 ユウナの記憶は、サクで上書きされてきた。

 サクがいない今も、その辛い記憶が明瞭になることはない。

 まるで術でもかけたかのように、サクばかりが思考を独占していた。


 そんな惚気にも似た思考は、鈴を鳴らす女が貫かれた時に、現実に返る。


 どれだけゲイが非情にサクの四肢を砕いたのか。
 
 リュカが陛下と傅(かしず)くほどに、どれだけ大きな存在だったのか。


 そのゲイが、薄く不安定になった水壁の奥から、餓鬼の橋を踏みつけてやってくるのが見え、震えあがった。


 イタチはくったりとして、シバだけではあの金色の力を返せられない。

 その他居るのは、恐怖に泣きじゃくる小さな子供達と、水色の球の中に入っている…餓鬼に食われたギルだけ。


 どう見ても、ユウナの目では、この場にいる者達で乗り切るのは不可能に思えた。


 この水壁から出たとしても、餓鬼の居る海。

 素早い動きなど望めない。
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