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吼える月
第27章 再来

 

「嫌だよ、僕達ここで死んじゃうの!? シバ、シバ!!」

「あの空から落ちた人のように、死んじゃうの!?」


 水壁を通して、自分達を救う側の女がいなくなったことを知り、子供達は狼狽していた。砦で餓鬼に襲われた時のような、恐怖の連鎖が起きていた。



「ユウナ」


 シバがユウナに問う。


「黒陵の船から現れた、あの金色の男は……」

「あいつがリュカが"陛下"と傅(かしず)く…"光輝く者"。リュカと共に黒陵を乗っ取った男よ」

「光輝く者……だからか」


 シバの身体は小刻みに震えていた。

 それは同種ゆえの共振でありながら、未知数なものへの畏怖でもあった。


「あれだけの者だから、倭陵の不吉な予言を叶え、防御に秀でた国を取れたのか」

 状況を悟ったシバの顔には、諦観のような表情が浮かんでいた。

 武人であれば、闘ってわかる相手の力と、闘わずともわかる力というものがある。金色にの男に関しては、後者だった。


「ユウナ」

 シバは、ユウナが手に抱えるイタチを見た。


「お前だけなら、イタチの力でここから出られるだろう」

「え?」

「すまなかった。俺の力不足だ。……あいつに、なれなかった」


 シバは悲しげに微笑んだ。


「生きろ」


――姫様、生きて下さい!!


「お前には、帰る場所がある」

 祖国を失ったユウナが、帰ることが出来る場所――。

 シバの言葉は、サクの元を示唆していた。
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