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吼える月
第27章 再来
「そうだ、猿!! テオンは!? あたいのテオン!!」
「テオンはお空を飛んでいる」
「えええええ!?」
「テオンは鳥さんの仲良しなんだ。お前達もテオン見習って、鳥さんと飛ぶんだぞ。それより、"あたいの"?」
口を滑らせたイルヒは、真っ赤になって両手で口を抑えて、ユウナと意味ありげな視線を合わせると、はにかんだように笑う。
そんなイルヒに、サクは片眉を跳ね上げて問う。
「チビ猿。いつからテオンはお前のテオンになったんだ? 俺を抜かして、その年でもうテオンと"そういう関係"に幸せ満喫してたのか!?」
大部分が私情、残り僅かの部分で保護者のように問いただすサクに、片想いをまだ誰にも知られたくないイルヒは、汗をかきながら苦し紛れに答えた。
「そ、そんなこと言うと!! 後でお嬢から"いい話"聞けなくなってしまうからね。ねっ、イタチちゃん?」
「我に振るか! ふ、ふむ……"ぶんぶん娘"の言う通り、姫から"いい話"を聞けなくなってしまうかもな。姫?」
「え? あたし?」
イルヒからイタチへ、イタチからユウナにそそくさと回って来たのは、"ユウナの告白"のこと。
サクを鎮めるには、ユウナしか居ないと…、ユウナからの話にサクを惹き付けるための、単純な説明放棄である。
「姫様、"いい話"って? 教えて下さいよ」
「ええええ!? 今ここで!?」
「はい」
サクのまっすぐな黒い瞳がユウナを見つめ、覗き込むようにして少し顔を傾ける。
露わになった精悍な首筋から、色気を感じてしまったユウナは、その顔を赤く染め上げた。