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吼える月
第27章 再来
両側に船――。
サクはシバを見た。
以前より強く神獣の神気を纏えるようになったシバは、魔を弾きながらの破壊の"相棒"に相応しい。
そして破壊のためには、大きな武器も必要だ――。
シバはサクの意図がわかったようで、渋面のまま……二対のうちのひとつ、大きな青龍刀を放り投げる。
「うわっと!! こいつらにあたったらどうするんだ」
「お前がきちんと受け取ればいいだけの話」
「受け取るもなにも、刃先を俺に向けるか、普通!!」
サクは人差し指と中指の間で、飛んで来た青龍刀の刃を止めている。
それは子供達の頭上だ。
そこから刀を半回転させて、ずっしりと重い柄を握った。
「それで死んだら、そこまでの武神将だということだ」
「お前な~っ、ちょっと青龍の力覚醒したからって、威張るな」
「それはこっちの台詞。ちょっと玄武の力があるからと、威張り腐るな」
素直ではないシバだが、サクを信用しているがゆえに、わざと子供達の前で危険な刀を投げてたのだと、それを自ずと悟るユウナは、大きな子供の喧嘩のように思えてくすくす笑う。
「お兄さん、早く~っ!!」
テオンの声が泣きそうだ。
「……ということで、姫様。ふたりっきりの感動の再会の機会は持ち越しです。戻って来たら、姫様の"いい話"聞かせて下さいね」
「ええ!?」
「話すって自分で言ったじゃないですか! なにそこで飛び上がって驚くんですか! そんなに、俺にはしたくない話なんですか?」
「したくないわけじゃないんだけど、もっとゆっくり、もっと落ち着いてから……」
恋を自覚した乙女は、情緒を大切にして告白したい。
だが、色恋沙汰に疎いサクは、自分に情緒を求められているなどまるでわからない。