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吼える月
第27章 再来
「俺が姫様に"いい話"があると言ったら、姫様ゆっくりできる時まで待ちますか!? 後で絶対話すと言っても、いつもその場で俺の胸倉掴んで吐かせたじゃないですか。おかげで誕生日の贈り物、かなり前から没収されたし」
「うっ……」
「お兄さん、ゲイの船だけが、一艘だけ遠く離れている。もしかして遠くから船を爆破させて、そこを集中的に攻撃する気かも。早く~っ!!」
サクはきりりと顔を引き締めた。
「ではシバと行ってきます。船を…砲筒を、叩き壊しに。イタ公、お前は姫様のところにいろ。勝手に俺の力引き出していいから、姫様達を護れよ」
「わかった。結界を小さく凝縮して強固にするゆえに、小僧の力貰うぞ」
「お好きに。では、シバ!!」
「ああ!!」
サクは、ユウナを見て微笑んだ。
それがなにか無性に儚げに思えて、ユウナはシバに続いて水の壁から出ようとするサクの服を掴んで引き留める。
「姫様?」
「"いい話"、戦いが終わったら真っ先にサクに言うから。だからあたしの元に帰ってきてね?」
それは約束――。
無事に帰るとの、サクからの言葉を引き出したかった。
「当然じゃ無いですか。俺の帰るべきところは姫様の場所。はい、"いい話"を楽しみに帰りますから。待っていて下さいね」
サクがユウナの手を上からぎゅっと包み込む。
それは鍛錬の結果が染み渡る武骨さを見せながらも、ユウナを愛でる繊細さを持ち合わせる手だ。
サクはその手の熱さと力に愛を込める。
「姫様をひとりにしません」
揺れる瞳を向けるユウナを見つめながら、ユウナの手を服から引き剥がし、ぐっと引き寄せ……、ユウナの手の甲に口づけを落とす。
誰が見ていても態度を変わらぬ、忠誠のようなひたむきな愛の表明――。