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吼える月
第27章 再来
「お前!! 遅いと思ったらなにを!!」
「やべ、シバに怒られた」
ユウナは真っ赤になって手を離すと、サクは屈託の無い笑顔で声をたてて笑い――、
「では、行ってきます」
「……いってらっしゃい」
ユウナの元から離れていく。
再会したのが一瞬の夢のように思えるユウナは、なにか胸騒ぎを感じていた。
サクの身に何か――?
サクを案じたユウナが、胸騒ぎは自分の身におけることだったのと悟ったのは、それから僅かの刹那。
……イタチすら気づかぬ、そんな時間と方法で、ユウナは――。
ユウナに背を向けている子供達は水壁から、サクとシバが砲筒を青龍刀で叩き切って、船を爆破させているのを歓声を上げて見ていた。爆破は隣の船に飛び火し、餓鬼も燃える光景が繰り広げられる。
子供達は、餓鬼が敵だとわかっていながらも、悲鳴のように奇声を上げて生きながら消える餓鬼を見て、なんだか哀れに思った。
「ねぇ、お嬢。餓鬼は、ひとだった時の心って、あるのかな……」
そう振り向いたイルヒは、目を瞬かせた。
「あれ、お嬢!? お嬢っ!?」
そこにはユウナがいなかった。
身体を麻痺させて動かない、イタチを残して――。