この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第27章 再来
「うわああああ!!」
執拗に弧を描く金色の光線に、テオンの鷹が傷を負い、離されたテオンが落下する。慌てて下降して救いに向かう鷹に、今度は金色の光が直撃して、鷹はそのまま息絶え落下した。
「うわわわわ、うわわわわ!!」
テオンの真下は、テオンが集めた餓鬼の群れの中。
同様に集中力が消えたゆえに、餓鬼は幻覚から目覚め、新たな餌……テオンという餌に興味を示す。
黒い群れが落ちるテオンに襲いかかる――。
「テオン――っ!!」
子供達が絶叫をあげた。
その声は絶体絶命の状況にいるテオンには届かず。テオンの頭の中には、餓鬼の中で生き延びたサクとユウナが思い浮かんでいた。
生延びられる可能性はあるのだ。
だとしたら――。
どんな形であれ、必死にもがいて餓鬼の中から生還しよう。生きてさえいれば父の志を受け継げると、生延びることを強く心に誓った時。
目の前の……餓鬼の群れの海面から、ひとつの手が飛び出た。
それが目を見開いて落下するテオンの腕をぐいと引き込み、より早く、彼の小さな身体を海の深層に沈めていく。
海面にいる餓鬼よりも深く沈んだテオンは、手を強く下から引っ張る主を見た。
それは――。
「!!!!」
鷹から落ちて、サクが助けに行こうとしていた女だった。
「テオン――っ」
シバの悲鳴のような声が響き渡る。
悲憤を感じさせないほど早く、金色の光がまた走る。
テオンを失い意識を乱したシバに、金色の光はいくつもに分裂し、光線の五月雨のように襲いかかる。
圧倒的に降り注ぐ力の前に、シバが死を覚悟した時だった。
「シバ――っ!!」
その時、聞こえたのは、ここにいるはずのない声。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉ!!」
シバに向かう金色の力を押し返すのは、海のように深い青色。
それを、唸るような轟音をたてて放つのは――。
「あやつが、ハン殿を殺したのか!! その上にシバまでも…させぬ!!」
鷹に乗って現れた、青龍の武神将……ジウだった。