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吼える月
第27章 再来
 

「うわああああ!!」


 執拗に弧を描く金色の光線に、テオンの鷹が傷を負い、離されたテオンが落下する。慌てて下降して救いに向かう鷹に、今度は金色の光が直撃して、鷹はそのまま息絶え落下した。



「うわわわわ、うわわわわ!!」


 テオンの真下は、テオンが集めた餓鬼の群れの中。

 同様に集中力が消えたゆえに、餓鬼は幻覚から目覚め、新たな餌……テオンという餌に興味を示す。



 黒い群れが落ちるテオンに襲いかかる――。


「テオン――っ!!」


 子供達が絶叫をあげた。


 その声は絶体絶命の状況にいるテオンには届かず。テオンの頭の中には、餓鬼の中で生き延びたサクとユウナが思い浮かんでいた。

 生延びられる可能性はあるのだ。


 だとしたら――。


 どんな形であれ、必死にもがいて餓鬼の中から生還しよう。生きてさえいれば父の志を受け継げると、生延びることを強く心に誓った時。


 目の前の……餓鬼の群れの海面から、ひとつの手が飛び出た。

 それが目を見開いて落下するテオンの腕をぐいと引き込み、より早く、彼の小さな身体を海の深層に沈めていく。


 海面にいる餓鬼よりも深く沈んだテオンは、手を強く下から引っ張る主を見た。



 それは――。


「!!!!」



 鷹から落ちて、サクが助けに行こうとしていた女だった。



「テオン――っ」



 シバの悲鳴のような声が響き渡る。


 悲憤を感じさせないほど早く、金色の光がまた走る。

 テオンを失い意識を乱したシバに、金色の光はいくつもに分裂し、光線の五月雨のように襲いかかる。


 圧倒的に降り注ぐ力の前に、シバが死を覚悟した時だった。




「シバ――っ!!」



 その時、聞こえたのは、ここにいるはずのない声。




「ぐぉぉぉぉぉぉぉ!!」



 シバに向かう金色の力を押し返すのは、海のように深い青色。


 それを、唸るような轟音をたてて放つのは――。



「あやつが、ハン殿を殺したのか!! その上にシバまでも…させぬ!!」



 鷹に乗って現れた、青龍の武神将……ジウだった。

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