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吼える月
第27章 再来
――離せ、離せよ!!
――よいか、小僧。覚えておくのだ。これが"遮煌"!! お前達は穢れた存在として、倭陵にはいてはならぬのだ!!
――いてはならないなんてないよ!! 僕達がなにをしたって……。
――存在こそが罪。これが倭陵の見解だ。だが……。
その時だった。ソンファが突然、ジウを向いて正座をしてから手をついて頭を垂らしたと思うと、枕の下から取り出した小刀で喉を突いたのは。
"シバ、ごめんなさい"
――母さぁぁぁぁぁん!!
血に染まって崩れゆくソンファ。
発狂するように叫んだシバが、背中に落とされた手刀で意識を無くす。
――すまぬ、ソンファ。シバを守るために……。
ジウの呟きも知らぬままに――。
そして目が覚めたら、見知らぬところに寝ていたシバは、ギルが覗き込んでいるのを知り、ジウかと思って悲鳴をあげた。
――丁度"配給日"でよ、お前だけがあそこに残されていたから、運んできた。ここは俺の家だから安心しろ。なにがあった?
ギルにすべてを話してシバは泣きじゃくった。
帰る場所がもう無いと泣いた。
それは父に会いたいがために強がって大人のふりをしていたシバの、率直な"子供"の心情だった。
シバの心は、迷い子のように。
――帰る場所なら、俺が作ってやる。
ギルの大きな手が、シバの頭の上に置かれた。
温かいその温もりに、シバはまた泣きじゃくった。
――俺はジウの兄弟の子供で、お前の従兄になる。俺もジウに恨みがある。お前はひとりじゃねぇ。俺という家族がいる。
心の底からギルを慕った。
その影で、無意識に拒まれた父親への愛を求めながら。
傷ついた心は、ギルという代償を得て回復していく。
父を憎み、父を愛し――。
ギルに習った武術も、ジウから直伝のものだということを知らずに、ギルよりも遙かに早く習得して。