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吼える月
第27章 再来
「シバ。子供は、親からどんなに縁を切られても、親への愛情は忘れられないものだよ? あ、ごめん。ちょっと降ろして。素直になれない駄々っ子は、同じ境遇だった僕が一番、理解できるはずだから」
女は、テオンを肩から降ろした。
「だ、駄々っ子!?」
シバが眉を急角度に曲げて憤慨した。
「そう、駄々っ子」
顔色悪いテオンが、四つん這いになるようにしてシバの足元に寄る。
「そして、"やさぐれ"。なにも見えないことを知らずに、生かされていることを知らずに自分で不幸に酔っていた。……僕もね」
「テオン、お前……?」
「テオン様は、現祠官であられる」
ジウは片膝をついてそう言うと、シバの目と口が大きく開かれた。
「子供で祠官!?」
「あはははは。シバ、僕は君よりずっと上だよ、こんな身形だけど。隠していてごめんね、君が武神将の息子だったように、僕は祠官の息子。青龍の力を持てずに父親に捨てられ、【海吾】に拾って貰った身の上さ。
そして父亡き後、僕がこの国を統べる決心をした。ああ、ジウ。そんな堅苦しくなくていいから。はい、普通に立って」
「御意」
「!!!???」
「なんだかいつも冷静な君のそういう反応を見るのが楽しいね。一体どこが一番驚いた要素なのか聞いて見たいけれど、そんな暇はないね。
シバ。もしも君とお母さんが、"遮煌"でジウに生かされていたらどうなっていたと思う?」
「え?」
「ジウにとって、私情で命令を遂行出来ないのは、青龍の武神将にとってはあってはならないこと。必ず、ジウの足枷になる。……それを、君のお母さんが望むと思う?」
「だったら母さんが、この男の名誉のために死んだというのか!?」
「それだけじゃないと思うよ?」
テオンはジウを見た。
「親に捨てられた子供の生きる"力"となるのは、"怨恨"。ジウは、シバに自分を恨ませることで、親がいなくても生延びる力にしたんだと思う。……違う、ジウ?」
ジウは返事の代わりに目を伏せた。