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吼える月
第27章 再来
「なんで……わかっていたならなんで母さんを止めなかった!!」
シバはジウの胸倉を掴む。
「私はソンファを正妻に迎えようとしたが周囲の妨害にあい上手くいかず、そして彼女は、武神将になろうとしている私の枷になりたくないと私のもとから出て行ってしまった。
私は武神将になり正妻を迎えねばならなかった。武神将の後継となるべき子供も設けた。だがソンファを忘れられず、ようやく行方を掴んだのだ。彼女は仲間と共に身を隠し、彼女がお前を産み落としていたことを知り、たまらず私は会いにいった。
だが彼女の希望で、私の前に"光輝く者"の特徴を持つ子供が懐いていることを知られたらいけないと、私は死んだ者となり、シバには寝顔だけしか会わせて貰えなかった。私の子なのに、その後も抱くことも許して貰えなかった」
ジウの独白が続く。
「"遮煌"時、私はソンファとお前を連れて、別の安全な場所に匿う気だった。だが彼女はそれを拒み、どうせ肺の病で命はもうないから、そんな身で私の足を引っ張るくらいなら、今ここで殺して欲しいと。シバだけは頼むと言い張り……、彼女を強引に攫おうとした時、お前が来た」
あの時、シバと目があったソンファは、驚いた顔をして彼を見た。
まるでここに来て欲しくなかったというように。
「部下に見つかる前に、ソンファとお前を連れようとしていたのに、部下が来てしまった」
――武神将! あなたの"妻"は保護しましょう。ご子息も。
「武神将は命令に私情を持ってはいけぬ決まり。部下にそう言われて、そうしますとは私には言えなかった。いくら信頼している部下といえども、私が"光輝く者"達を殲滅せよという命令に従わなかったことは、いずれ皇主の耳に届く。閉鎖しない限り、情報は必ず漏れるものなのだ」
ジウはシバを見据える。
「そうなれば、倭陵の兵がソンファとシバを殺す。他国の武神将を用いても、残酷な殺し方をするかもしれない。それが私が命に背いたことへの、周囲への見せしめだ」