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吼える月
第27章 再来
◇◇◇
「ん……」
ユウナは身じろぎをして目を開けた。
見慣れない、細やかな飾りが施された格子天井が見える。
「ここは何処……?」
ギシリと軋んだ音を響かせて上体を上げたユウナは、ふかふかな布団が敷かれている寝台に横たわっていたことを知る。
寝台を取り巻く半透明な布を手でよけて見れば、焦げ茶色の平木を並べた壁を彩るように、煌びやかな調度品が目立つ、豪奢な部屋が拡がっていた。
玄武殿の自室より遙かに高級そうな装飾品が飾られ、そこにある卓と椅子も、黒陵では最高級とされる蒼陵の希少な虹彩石で作られたものだとユウナは推測した。
乳白色ではなく様々な色を内包するのが最も貴重で珍品だと、誰かに聞いたことがある。ユウナの目の前にあるのは、まさしくそうした珍品だった。
それらに暫し気を取られていたユウナだったが、ようやく記憶を巡らせて、ここに行き着くまでの記憶がないことを悟った。
確か自分はサクを送り出した後、背中に痛みを感じて――。
「あたし、拉致されてしまったの!?」
簡単に攫われた驚愕に、心臓がドクドクと音をたてる。
「そうだ、イタ公ちゃんは?」
頭に乗せていたはずのイタチはおらず、無論首にもいない。寝台や部屋のどこかにいるわけでもなさそうだ。
自分ひとりだけ連れられたのだと悟ったユウナは、心細くなる。たとえ人語を喋って無理難題言い出したり、力を使って皆を護れる珍妙な生き物であろうと、共にここまで来て頑張ってきたのだ。
せめてイタチだけでも、皆の元に無事にいるようにと願い、食用イタチとして食べられたり、見事な毛皮を剥がされていないことを必死に祈る。
ユウナは部屋に陽光を取り入れる丸い窓を見つけて、そこから外を眺めてみた。
その景色は海に包まれており――、
「え!?」
煙が立ち上る場所から遠ざかっているのがわかった。煙は、サクとシバが破壊している船のはずだ。
だとしたら、自分はサク達から離れていることになる――。