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吼える月
第27章 再来
ユウナは青ざめた。
「誰かっ!! 船を止めて!! あたしをあの場所に戻して!!」
大声に反応する者はいない。
見える扉を開けようとしたが、反対側に栓でもかけられているのかまるでびくとも動かず、どんどんと両手拳で叩いて叫んだ。
「開けて、ここからあたしを出して!!」
だが、部屋の奥にひとの気配がしない。
やがてユウナは痛む拳を手でさすりながら、項垂れるように俯いた。
暫く無言だったが、ふと…上げられたその顔には、諦観の色はなかった。それは忿怒にも似た、難関に挑むような光が目に湛えられていた。
「サクに……会うのよ、あたしは!! "いい話"、するんだから!!」
ひとときでも、サクと再会出来たことがユウナの勇気になった。
「あたしだって、やれば出来る子なんだから!」
――いいか、姫さん。木というものは湿気に弱い。湿気にやられた部分は腐敗の進度が速くなる。だからその部分が見つかったのなら、集中的に叩けば穴が開く。
……それは、ハンに言われた言葉。もしもハンとサクがいない時に誘拐されてしまった時のためにと、抜け出す原始的な方法を伝授されたのだった。
「それのおかげで、あたしとサクの悪戯に激怒したハンに、古ぼけた倉庫に閉じ込められても、抜け出すことが出来たのよね」
今、ユウナが閉じ込められているのは、どう見ても木で出来た壁。海に浮かぶ船のものなら、どこか潮風や水気にやられている場所があるはず。