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吼える月
第27章 再来
 
 
 
 久々に会うリュカは、少し痩せているように思えた。

 美貌はそのままながらも、強まった頽廃的な翳りが、煌めく銀の髪を際立たせ、リュカをより謎めいた深みある大人の男へと魅せている。

 黒陵で最高位を奪い妻まで娶って、それでも溌剌とした生気が感じられないのは、少しでも、心を痛めているからなのだろうか。

 どうしても良い方向に考えてしまうのは、長年の癖。

 それを自覚するユウナは自嘲気に笑いながら、歩み寄るリュカを見つめる。

 裏切られた幼馴染みや元婚約者としての立場ではなく、一国の姫として、その誇りがユウナを毅然とさせた。

 それでも意志に反して、引き結ぶ唇は震えその顔色は悪い。


 身体は覚えているのだ、恐怖の一夜を。

 ……呪いの言葉を。


 だがあの時と、自分は変わったのだ。

 サクがいてくれたから。

 サクが愛してくれたから。


 ……サクと、未来を夢見たから。


 過去から、目をそむけてはならない。


「僕を見て、そんな程度の震えですむとは、随分と呪詛の効果がなくなってしまっているようだ。

もう忘れてしまったのか、僕がお前に伝えた言葉を」



――僕はお前が……死ぬほど憎かった。



「覚えているわ」




――僕は……お前が死ぬまで、憎み続ける。


「あたしを憎んでいるんでしょう?」


 怖くない。

 ユウナは自分に言い聞かせる。


 あの時の自分とは違うのだと。

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