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吼える月
第27章 再来
リュカにもリュカの正義があるのかもしれない。
こんな目に遭わせられても、嫌えない自分がいるのがわかる。再会に胸一杯になり、あの夜のような激しい憎悪を自分にぶつけるのではなく、またこうして話しかけてくれるのが嬉しいと思う、……そんな、甘い自分がいる。
それでも、サクのことになると話は別だ。
サクを罵られると、怒りが込み上げるのだ。
わかりあいたいと思うのに、反発する心がある。
「どうして……裏切ったのよ」
ユウナは泣きながら、目の前で動かないリュカの胸を拳で叩く。
「どうして……あたしを騙したのよ……」
リュカはされるがまま。
泣いているユウナには、リュカの表情がなにも見えない。
「どうしてあの時のサクを助けてくれなかったの。あたし達は、昔から三人で仲良くしてきたじゃない……」
――確かに、僕自身ですら本当のように"錯覚"するほどの、13年来の演技の出来ではあったけどね。
「教えてよっ、そこまで憎まれている原因はなに!? あたしのなにがいけなかったの!? なにがお父様を殺させてしまったの!?」
リュカは答えない。
「教えてよ、教えてよぉぉぉぉぉっ!!」
ユウナは泣きじゃくる。
溜め込んだすべてを吐き出すかのように。
「なんでこうなっちゃったの、なんでよぉぉぉぉっ!!」
――ユウナを……必ず幸せにする。
「……ユウナ」
ユウナとは逆に、動揺を落ち着かせたリュカの目は、次第に澱み始める。
それにびくりとして、ユウナは泣くのを止め、怯えた表情をした。
昏い昏い、闇の瞳。
瞳は黒ではないのに、黒に思えるほどの闇を内包している。
「来い」
リュカは突然立ち上がり、ユウナの腕を掴んで引き摺った。
「なにを……っ」
「いいから来るんだっ!!」
怒気を含んだような声でユウナを連れるリュカは、ユウナを……今まで寝ていた寝台の上に放った。
そして自ら上衣を脱ぐ。
サクのような逞しさはないが、細身なのにしっかりと筋肉がついたその上体を眺めながら、ずるずると仰向けの状態で壁際に退避する。
嫌な予感がしたのだ。
あってはならない、望んでもいない身の危険。
ありえない事態の到来を。