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吼える月
第27章 再来
 

 とにかくリュカと距離を作ることだけを願うユウナは、寝台から逃げるという基本的な行動ができないほどに、怯えていた。


 そんなユウナに、艶やかな目を斜め上から落とすリュカ。それは、ユウナが苦手としていた、欲情した男の目だった。


「サクでも出来たのなら、僕でも出来るだろう?

憎悪を超える強い感情を……」


 リュカはゆらめくように動き、


「抱くことで、自分に向けさせることは」



 真っ青になって動けずにただ震えるユウナの上に覆い被さる。

 しなやかなリュカの裸体は、どうみても子供のものではなく、リュカがユウナの足を割るようにして、押しつけてきた股間にユウナはぞっとした。


 彼が興奮して勃たせているかなど、怯えるユウナにはわからないし、感触で直ぐにわかるまでの経験値がない。

 すべてはサクが、ユウナに合わせていたから。
 
 労るように優しくしていたから。

 ……こんな、凍てついた目をして脅えさせることはないから。


「意識あるお前を抱けば、お前は僕を忘れられない。僕の憎悪で生きるしかなくなる」


 こんな、恐怖を感じさせるような、残忍な笑みは見せない。


 それなのに、布越しに触れあう秘部は、どうしてサクと似たような熱の息吹を感じるのだろう。

 どうして言葉にならない"なにか"を感じてしまうのだろう。


 ……だから、ユウナは余計に怖いのだ。

 その猛るような"なにか"を憎悪だと思うユウナは、こうしてまっすぐにぶつけられていることに怯える。傷つきたくないという防衛本能が、早く逃げよと警鐘を鳴らす。



――僕が君の部屋に忍び込めれるように、本殿の鍵を開けていてくれないか?


 あの時、リュカに恋していると思い、抱かれる気だった。

 だがそう思えない今は、ただの凌辱にしか思えない。


「いゃ……やだっ!!」


 ゲイに犯されたあの一夜を思い出し、ユウナはさらに恐怖に泣き叫びながら、リュカを突き飛ばそうと両手を動かしたが、リュカに難なく、腕を交差させた状態で頭上に縫い止められた。

 足で蹴り飛ばそうとしたが、リュカの膝がユウナの太腿の上に乗り、動けなくなる。

 身じろいで四肢の枷を外そうとするユウナに、リュカは片手でユウナの服を破いたのだった。
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