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吼える月
第28章 企図
「なにを驚く、姫。姫に瓜二つなあの女をリュカが妻にしたのは、黒陵の姫の夫という肩書きが欲しいがため。あの娘を愛したわけではない。
あの"阿婆擦れ"娘の味がまあまあよく、リュカがあの娘を妻にしなければ、お前が余の玩具になっていたのだ。お前にそっくりな娘が居たことに感謝するのだな」
「そんな……酷いっ!!」
ゲイは冷淡に笑う。
「お互いの欲望のために手を結んだだけだ。あの娘の欲は、余に劣らずに凄まじい。余の精を受け、欲をさらに熟成してきたあの娘は、やがて勝手に姿を変えるだろう。妄執の塊、餓鬼のような魔物に」
「餓鬼……っ!! 欲……って?」
「ああ、姫の護衛だったあの…サクという男が死ぬことだ。死なないと手に入らないと思っているらしい」
「え……?」
「目の前で父親を殺して余に忠誠心を見せた。そして自分を利用していいから、サクを殺してくれと言ったのだ。どうしてもサクを殺せなかったら、サクが生きていられないほどの苦痛を与えてくれと」
ユウナは思わず目を閉じた。
心の中で否定し続けてきた、現実が明瞭に輪郭を描く。
そうなのか。
黒崙にいた…自分そっくりのユマが、サクを奪う自分だけではなく、彼女に振り向かなかったサクをそこまで恨んだのか。
サクを深く愛するために、サクの死と苦痛を望むほどに、歪んでしまったのか。