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吼える月
第28章 企図

 
「そんな……そんな、ハン、サラっ!!」


 身体の中に、激しい悲しみと憤りが渦巻く。


 サクを大切に育ててきた、武神将同士の夫妻。

 自分の教育係として、時には怒りながら、正しい道を説いてくれた、黒陵が誇る最強の武神将。

 片手を捧げ、命まで捧げたというのか。


 サクを……自分を、生かすために。



――死ぬわけねぇだろ、姫さん。サクの弟と妹を作るんだから、な。サラ。


 死んでしまったのか。


――ええ。



 大好きな大好きな……父親のような、母親のような……あのふたりが。

 
 どんな顔をしてサクに会えばいい?



「いいか、姫。お前がサクの両親を奪ったのだ。お前を助けるために、最強の武神将は死に、愛する妻も死んだ。それを知るサクは、お前をほんの少しも恨んでいないと断言できるか?」


 サクから"幸せ"を奪う自分は、サクにどう償えばいい?


「そして余の分身は、神獣の力が弱いことがわかり改良され――、蒼陵をすべて壊滅させるだけの力を持った」


 ゲイは残忍な笑いを見せながら、泣き続けるユウナに近づいてくる。


「さあ、そこから見ているがよい。己が関わるすべての者が死に絶えるすべてのことを。サクが死に、玄武の武神将は滅びる!!」



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