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吼える月
第28章 企図
自己陶酔したようなその声を掻き消したのは――、
「きゃははははは!! サクちゃん、死んじゃうんだって!!」
「そんなわけねぇだろう、チビ」
「きゃははははは!! サクちゃん、ユウナちゃんを恨んでいるんだって。可哀相にね~、恨んでいたらこんなに身体張らないのに」
「そうだ、よく言った、チビ!! お前もやれば出来る子だな!!」
「きゃははははは~」
ゲイの後ろから現れた、サクとユエだった。
ユウナが開けようとしても開かなかった、扉を開いて。
ゲイやリュカも驚いた顔をしているのは、ユウナだけではなく、ふたりすら気づかなかったと言うことだろう。
「サク!? ユエちゃん!? どうしてここに!?」
ふたりがしている漫才のようなものは、馬鹿にされたと感じるゲイの顔を不愉快そうなものへと変えていく。
そうさせるために道化のような登場をしたサクは、ユウナに会釈する。
「姫様、遅くなってすみません」
そして今まで通り、まっすぐな瞳をユウナに向けた。
「俺、ふたりが死んだことを知っています。それについて姫様を恨む気持ちはちっともありません。そんな心があれば、武神将になれませんよ。武神将という聖なる役職、甘く思わないで下さい」
会話を聞いていただろうサクが、涙を流すユウナに優しく微笑む。