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吼える月
第28章 企図

 
「ユウナちゃん、ユエも来たよ~。サクちゃんより頼りにしてね!! ユエ、ユウナちゃんを守って、ユウナちゃんに惚れて貰えるような武神将になる予定! きゃははははは~」

「黙れ、さっきの俺の言葉だろうが! 姫様、こんなチビより俺を頼りにして下さい! 俺はずっと姫様の武神将ですから!」

「ユエも武神将!!」

「黙れったら、このチビ!!」


 ふたりの掛け合いにユウナは笑った。

 泣きながら笑った。



 ハン、サラ。

 サクを残してくれてありがとう。



 あたしは、サクが好きです。

 ふたりにも伝えたかった。


 サクがたとえあたしを恨んでいたとしても、あたしはサクから離れることが出来そうにありません。

 あたしの気持ちを分かって、道化になって笑わせてくれるこんな優しい人を、手放すことができません。


 誇り高い黒陵の玄武の武神将を、最強の武神将の息子を、"あたし"の武神将にしてしまってごめんなさい。



 遠くでハンの笑い声が聞こえた気がした。



――あははは、姫さん。それでいい、思う存分サクを扱き使ってくれよ? 試練に立ち向かえば向かうほど、サクは俺を超えて最強になる。姫さんを守ることが、あいつの最強への道なんだ。なあ、サラ。

――うふふふふ、そうよ。姫様、今は頼りないかもしれないけれど、うちのサクの底力を信じて、未来に期待していて下さいね。



 ありがとうハン。

 ありがとうサラ。



 あたしは――。



 サクとゲイ、そしてリュカを交えた睨み合いの最中、ユウナは無防備に飛び出した。半裸の格好で、ただサクの元へと。


 伸びるリュカの手と、ゲイの手から逃れられたのは奇跡。



「サク――っ」



 ユウナはサクに抱きつき、サクがユウナを抱きしめ返す。

 ようやく互いの温もりを感じ取れたのは刹那。


 ユウナは微笑んで身体を離す。



 サクが居るだけで強くなれる。

 今は、その確認だけでいい。

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