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吼える月
第28章 企図
 


 部屋の外は廊が続いていた。


「さあ、ユウナちゃん早く!!」


 慣れているように走るユエの手を握りながら、ふとユウナは足を止めた。



「ユエちゃん、ひとり女の子を助けたいの」


 真摯な顔をするユウナに、ユエは首を傾げて訊いた。



「それはお隣にいたユマちゃんのこと?」


「え!? 先に会ってたの!?」


「うん。ユエの笛でサクちゃんとこの船に来たはいいけれど、迷わされちゃって…。行き着いた先にユマちゃんがいたの。それでサクちゃんがワシちゃんを使って、安全な場所へと飛ばしたよ」

「ワシちゃん? もしかして、いつも一緒にいるあの女の人?」

「ううん、あの子は名前がないの。あの子じゃなく、大きな鳥さんのこと」

「あの鳥! じゃあユマは無事なのね?」

「うん。……多分」

「多分ってなに?」


 ユウナの顔が曇った。たがそれは見る見る間に払拭する。


「……終わりよければすべてよし! きゃはははは!!」


 責任放棄したユエが、愛くるしい顔で笑った時だった。



「きゃ、なに!?」


 船上の景色が変わったのは。

 ぐにゃぐにゃと歪み、そして新たに現れたのは――。


「ここ、【海吾】の砦!?」

「違うよ、ユウナちゃん。ここはそれによく似た洞窟」


 大きな岩石で覆われた天井と左右の壁。

 足場は山道のように舗装されていない、凸凹とした地面だった。


「しかもユウナちゃん、よく見て…」


 ユエの小さな指が指し示す先は、3つに分岐していた。


「この先は迷路になっていると思う。後ろの道も消えているでしょ?」

「まあ、本当!!」


 ふたりは道の中途に立っていた。


 前も後ろも分岐しているだけで、これから先も錯綜している道程であろうことは、ユウナにも容易に想像出来た。

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