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吼える月
第28章 企図
   


 ◇◇◇



 ユウナが遠ざかるのを感じ取ったサクは、ゲイを見据える。


「……あの夜のこと、リュカを誑(たぶら)かせていること、黒陵のこと、今日のこと……、その他色々と言いたいことはあるが……」


 その目が殺気に満ちる。



「お前、ユマになにをした」



 その詰りはユマへの恋心からではない。

 幼馴染みとして、男として、人間としての憤りだった。



「……くく。それは"見た"からの言葉か? それとも姫との会話を"聞いた"からの言葉か?」


 サクは、先に会ったユマを思い出す。

 久しぶりに見たユマは、寝台の上で全裸で横たわっていた。


 すぐに助け起こさなかったのは、艶めかしいその裸体に、サクの男の部分が刺激されて、魅入っていたからではない。

 清純さが一切見受けられない、白濁に染まった女体が、本当にユマの姿なのかどうか自信がなくなってしまったからだ。

 穴という穴から垂れ流された……どろりとした白濁の液が、なにを意味するのかサクにはわかった。

 だがそんな状態になりながら、それに嫌悪したり、泣いているのならまだしも、目の前の女はうっとりとした顔で、舌で掬って舐めていたのだ。

 その淫靡な仕草が、かつてのユマの姿とはかけ離れていた。


 そして立ち竦むサクに気づくと、一瞬、揺れた目をして、すぐに憎悪に目を吊り上げ、人間とは思えない凄まじい跳躍力を見せて、サクの首を噛みつきにかかったのだ。

 ユウナの顔をしたユマは、最早人ではない……サクはそう悟った。

 そしてユエは襲わないことから、自分と認識した上での行為……そこまで自分はユマを傷つけてしまったのだということに気づいた。
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