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吼える月
第28章 企図
「な……っ」
「ただ余は、無残な姫を抱きたくはない。そこでだ、リュカ」
リュカは傅(かしず)いて言った。
「御意。ユウナを連れて参ります」
「お前の前で姫を抱こう。今度は、姫に余を求めさせてやる。あの……ユマという娘のように、余の精を浴びたいと言わせて見よう」
「やめろ……やめろ、リュカ!!」
「行け、リュカ」
サクの声を無視して、リュカは拾った上衣を羽織ると、そのままユウナが出て行った扉に向かう。
「リュカっ!!」
「させぬ」
遮ろうと動いたゲイに、サクは青龍刀で斬りつける。
しかしゲイは、間合い距離を完全無視して、ひらひらとその太刀筋をかわしてサクの攻撃を回避すると、手に宿した金色の力を大きく強めてサクに放った。
「させるか!!」
だがそれを、青龍刀で垂直に叩き斬るサク。
ゲイが、以前のようにサクの四肢を砕こうと目を光らせるが、サクは玄武の力を纏い、それを跳ね返す。
ゲイに遊ばれていた前とは違う。サクには、神獣の加護があった。
リュカの姿が見えないことに舌打ちをするサクに、ゲイは不愉快そうな表情を顔に浮かべて、言い捨てる。
「神獣の力を纏ったからと自惚れるな。そんな程度の力で、余に勝てると思うか?」
「……思わねぇよ。だけど、俺にはお前が殺せない切り札がある」
リュカを追うのをやめ、逆に挑発的な態度になったサクに、ゲイが訝しげに目を細める。それを見てサクが嘲るように言った。
「知りたいんだろう? 青龍の鍵の在処を」