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吼える月
第28章 企図
「何を言い出すかと思えば……。鍵の在処は青龍の武神将が…」
「ああ、その在処がわからねぇから、分身を使って、シバを瀕死にし、ジウ殿を脅しているんだろう?」
「なぜそれを……」
「俺にはな、何でも知っているチビがいてくれるんだ」
「あの幼女か……」
「だけどお前の反応で、あのチビは戯言を吐いたんじゃねぇことがわかった。だとしたら、俺は……」
サクは笑う。
怒りが籠もったその目をゲイに向けて。
その瞳には、一切の揺れがなかった。
「俺もジウ殿から隠し場所を聞いていたとしたら? その上でジウ殿に委託されて、"シバ"を使って場所を移した。その可能性があることは、勿論お前なら見抜いているよな?」
ありえない、虚偽を真実にするためにサクははったりをきかす。
"シバ"が関係しているとゲイが思えばこそ、その名前をわざと出したサクの言葉に、耳を傾け始める。
そして反論がないということは、神獣の力が宿るところに、ゲイは遠視をすることすら出来ず、手出しが出来ないという事実を改めて確認する。
玄武殿にゲイが来たのは、リュカが祠官が施した結界を壊したために。だから神聖なる祭壇に入って来れたのだ。
どんなに強くとも、ゲイは不完全だ。
そう思うサクは、少し余裕が出来た心で事態を冷静に判断しながら、次第に詭弁を弄していく。
「俺はお前がジョウガの箱を開くために、四神獣の鍵を集めていることを知った。奇しくも、姫様が凌辱されたおかげで、その鍵が物質になっていない場合もあることも知っている。
俺達が蒼陵に来たら、まずその危険性をジウ殿に訴えると思わないか?」
「………」
「今までお前やリュカがジウ殿の元に直接攻め込んでいないといないということは、青龍の力に邪魔されて、どこに潜んでいたのかわからなかったはずだ。仮にわかったとしても、そこには行けなかった。
そんな場所で俺とジウ殿がなにを話し、そして玄武が守る場所で俺がシバになにをしたか。
それは――、ジウ殿がいるのにシバが簡単に瀕死になったことに、理由があるのだとしたら?」