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吼える月
第28章 企図
「……続けよ」
「つまり、鍵の在処を知るシバを、ジウ殿が口ふさぎにかかったと。なにせ愛情の通わない親子だ。あの厳めしい顔をした堅物のジウ殿なら、国の危機を守るために、息子すら犠牲にしそうじゃねぇか?」
サクのはったりには、少しの揺れはなかった。
ジウはシバを愛しているという言葉が返らないのは、実際のところの親子関係をきっちりと把握しているものではないのだろう。
「ジウ殿は移した場所は知らねぇ。それは無理矢理言わせられることを案じてのことだ。本当に知らないのなら、言えないだろう? ジウ殿が嘘ついたり演技が出来る男だと思うか?」
「だとすれば……、あの武神将は始めから嘘をついているというのか」
ゲイの言葉に、サクは内心喜んだ。
虚偽の話に、乗ってきていると。
「嘘判定に俺を使えば一発だ。俺を見ながら、嘘をつけるわけがない。きっと、俺が鍵の在処を知っていると言うだろうさ。
仮に在処を知らないくせに嘘を貫いたとして。だったら、俺が正しい在処を教えてやる」
ゲイの表情になにかが走る。
「どうだ、俺が教えようじゃねぇか。
見返りはわかっているな?」
「……姫の安全か」
サクは笑う。
「だが、お前が簡単に青龍の鍵の在処を吐くとは思えないがな」
「ここは俺達の国じゃねぇ。他国の鍵を守る義理はないさ。それに、俺は別に女神ジョウガの箱を開きたいわけじゃねぇし、本当に願いが叶う箱があるとも思っちゃいねぇ。
お前は、ジウ殿が嘘を言っていたところで、真実の在処を見つけられるのか?」
ゲイの瞳が僅かに揺れる。