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吼える月
第28章 企図
単純なのは、原料が軽い紙だからなのか。造作があまりに簡素だからか。
ユエが作ったのだろう紙の人形と、対等の立場で会話しようとするサクが、どこか微笑ましく思えるユウナは、ユエに笑いながら言う。
「うふふ、なんだか目に浮かぶわ。基本サクは誰とでも"仲良し"になれるから。相手が人間じゃなくても」
そしてふと思い出して訊いてみる。
「ねぇユエちゃん。サクはなにを"待って"いるの?」
――サクちゃんは、"待って"いるの。そこにユウナちゃんがくっついていれば、計画は台無しになってしまう
「やっぱり、あたしには教えて貰えないもの?」
悲しそうなユウナの表情に瞳を揺らしたユエは、あたりをきょろきょろしてから、紙の人形の……耳の位置にあたる部分を両指で抑えるように持ち、そして真剣な顔をした。
「ユウナちゃん、お耳貸して?」
「え? こう?」
「うん。こら、お人形さんは駄目! ばたばたしないでよ、破けちゃうよ~」
内緒話を、共に聞きたいらしい人形が、仲間外れは嫌だというように暴れる。
だがそれを抑えながら、ユエが背伸びをして、小さな桜色の唇をユウナの耳に近づけ、囁いた。
"青龍が目覚めるのを、待ってるの"