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吼える月
第28章 企図
「僕がどれだけお前を憎んでいるか、いつも忘れるな」
リュカの忿怒が、ユウナにまっすぐに向かった。
ユウナの瞳孔が銀を映し、開いた――その時。
「ユウナちゃん、ユエが来たよっ!!」
頭上に飛んで来たのは、大きな鷹の上に乗ったユエ。
ぴぇぇぇぇぇぇ。
呼応したように鷹が大きく鳴くと、その足でリュカからユウナを奪うようにして、引き揚げた。
リュカが投げた偃月刀も、青い光も、鷹は余裕で避けて甲板に出ると、飛び跳ねるようにして捕まえようとする餓鬼を真下に、大きく大空に飛び立った。
……船が小さくなっていく。
「ユウナちゃん、大丈夫~?」
上からユエがユウナに声をかけたが、
「大丈夫……よ……」
その声には強さがなく、震えていた。
猛速度で飛ぶ鷹は、やがて似たように人間を吊る仲間がいる場所へと飛んでいく。
そこに混ざっている、人を吊していない鷹が進んでやってきて、ユエはそちらの方に飛び乗った。
「お嬢~」
空中で合流したのは、イルヒを始めとした【海吾】の面々。
イルヒが抱いているイタチを見て、ユウナは泣きながらイルヒからイタチを戻して貰い、くったりとしているイタチに頬ずりをする。
――サクへ想いを伝えると、必ず発症する……そんな呪詛を。
そんなはずはない。
以前のような恐怖を感じないのだから、呪詛は失敗しているはずだ。
そう思えども、
――僕がどれだけお前を憎んでいるか、いつも忘れるな。
心に突き刺さるリュカの言葉は、呪いとなんら変わりがない。
苦しいよ……。
イタチの毛がユウナの涙で濡れたが、イタチは動くことがなかった。