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吼える月
第28章 企図
「お嬢、どうしよう……」
イルヒが泣きながらユウナに訴える。
「金色の奴が現れて、シバがやられちゃったんだ! きっと、あのもたもたしてる憎い武神将がシバを殺しちゃうよ! 早く手当しないといけないのに……っ!! 兄貴もまだあの海の中なんだ!」
海の中に揺らめく、ギルを包んでいる青い球状のもの。
ゲイに注意を向けられたら危険だ。
「兵は兄貴やシバやあの武神将を助けようとしたんだけど、何人か金色の光でやられちゃったから、武神将が来るなと叫んで……」
なにも出来ずに煩悶しているだろう兵士達が、自分達の真下……ジウの真上を飛んでいる。
ユウナはそれまでの憂いを吹き飛ばした。個人的なことは今考えるべきではないと、きりりと顔を引き締める。
「金色の奴? あたしはゲイから逃げてきたのに?」
遙か下、ひとつの船の上には人影が見える。
よく見れば、人影はシバとジウだけではない。
「あれは……、テオンと…それとユエちゃんと一緒にいるあの女のひと! 生きてたのね! よかった!」
だが――。
「なんであそこに、またゲイがいるの!?」
――そして余の分身は、神獣の力が弱いことがわかり改良され。
"分身"?
目に映るのが偽物だとしたら、本物は先程会ったゲイなのだろうか。
この場に登場している人物は、それだけではなかった。
「お嬢、さっきね、お空に誰かが浮かんだんだけど、誰かわかる?」
イルヒが指さした先には、縛られた人間がいる。
鷹が少し近づいてくれた。
そして確認できた、情けない泣き顔。それは――。
「ヒソク殿よ、ジウ殿の息子の、次期青龍の武神将の!」