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吼える月
第28章 企図
「ジウ殿に対してもすべては"噂"でしょう!? どうしてそんなことをしていたのか、ジウ殿本人から聞いていないのよ。誰かが憎いからとその家族まで憎むのはおかしいし、ひとの命をどうこうする権利は、あたし達にはないわ。そうしていいのは、神獣とか女神ジョウガだけよ!」
ユウナは息巻いた。
「推測だけで、結果人間の命を見殺しにするのなら、あなた達の命を奪わずに路頭に迷わせようとしたジウ殿より、よっぽど悪質よ!」
「お嬢……」
いつも優しく、そして勇ましいユウナは、いつでも子供達の味方でいて、そして子供達からも好かれていた。
それは居心地のいい環境ではあったが、ただ優しくするばかりが子供達のためになるとは思えなかった。
考え方が歪んでしまったら、人生も歪んでしまう。
だめになってしまう"兆候"が見えたのなら、それをその時に正せねばならない……そう使命のように強く思ったのだ。
誰にも気づかれないために歪みを正されず、結果人の命を簡単に奪える人間を作ってはならない。第二のリュカを作ってはならない――。
「ひとの命に良いも悪いもないの。悪いことをしたのなら償うことができるのも、生きていればこそ! 国の危険な時ほど、皆で助け合わなきゃ! それにあなた達は人殺しにになりたいの!?」
子供達から、元気ない声が響く。
「あなた達は、悪いお手本の中で育った。ならばなにが正しいのか、なにが蒼陵の民としての望みなのか、それはわかっているはずよ。同じ蒼陵の民であるジウ殿が憎くて、本人だけではなくその子供を見殺しにするのは、あなた達にとって正しいこと? 今すべきことは、助けられる命を見捨てること?」
項垂れる一方の子供達。そして……、
「お嬢、ごめんなさい~」
イルヒは泣きながら謝った。
友達なのに、親のように叱ってくれるユウナに感動しつつ。