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吼える月
第28章 企図


「え~。同じ場所にふたりで行くの?」

「悪い!?」

「悪くないけど、ユエの鳥さん、"あの子"とシバちゃん抱えて運べるかなあ…。しかも攻撃されたら、それをよけながら……」

 現実的な問題を口にしたユエだったが、イルヒはユエがどうしても自分がテオンを救いに行きたいんだと駄々をこねているのだと勘違いし、

「あんたは人間なんだから、鳥の心配しなくてもいいの! はい、行くよ。あたいがテオンを救いに行くの! いいね、鳥!」


イルヒの八つ当たりを受けた鷹は、怖れたように従った。


「テオンは、あたいが守るんだから!」


 ユウナは恋するイルヒの姿にくすりと笑ってしまったが、とにかく三方向で攪乱すれば、同時射撃を防ぐことが出来ると内心喜んだ。

 これならかなり、救出劇が楽になるかもしれない。



「僕達が囮になる!」



 その声は、子供達からだった。



「ここで黙っていたら、蒼陵の男がすたる!」

「そうそう、俺もそれ思ってた」

「シバを救わなきゃ……」

「それに兄貴もまだ、海の中。よぉし、俺は兄貴を救う!」

「僕も手伝う!!」

「じゃあ、自分はあの金色を攪乱するように動いてみる」

「俺も!」

「僕も勿論!!」


 自主的に自分の役割を決めた後、一斉に叫んだ。



「【海吾】を甘く見るんじゃねぇや!」




 ユウナは笑顔で頷いた。



「じゃあ行くわよ! 誰か兵士さん達にもお願いしてくれるかしら!?」


「了解!」



 そして大勢の鷹は、思い思いの方向へ飛んでいく。



「鳥さん……頑張ってね」


 ぴぇぇぇぇぇ!



 ユウナの励ましに、鷹は元気よく鳴いた。


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