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吼える月
第29章 変現
◇◇◇
「選ぶがいい、青龍の武神将。
ヒソクという名の息子を助けたければ、真実を告げよ。
シバという名の息子を助けたければ、虚偽を告げよ。
どちらかひとりは殺し、どちらかひとりは手を出さずにいよう。
今一度問う。
青龍の鍵は、何処に?」
ジウは感じていた。
微かに身体に伝わってくる、青龍の力の波動を。
青龍の目覚めるのがまもなくだと知った。
青龍が目覚めれば、力を多く持てる。
そのために、時間稼ぎをして、待っていたのだ。
今までまるで起きる気配を見せなかった、青龍の覚醒を。
この金色の男……ゲイを倒すには、青龍の力がなければ無理だとジウは踏んでいた。
彼が備えている青龍の力は、子供達の未来のために犠牲になることを選んだ大人達の命を、青龍に注ぐための媒介にしており、日々その量を減じていた。
ジウの力なければ、大人達の命は青龍に行き着かない。ただ無駄に消え去るのみ。海底都市の塔に動力はあれども、そこから神獣に流れ込むためにするには、ジウの力が必要だった。
さらには川と化した青龍にジウは力を注ぎ込んでおり、武神将として力の量の維持や新たに加えることを選ばずに、力を減らす一方の道を選んだのは、それだけに、すべてを護れる強固な街を作る"防御"の街作りに全身全霊を打ち込んでいたということだ。
攻撃ではなく、防御の策を主張する祠官の命令を忠実に守っていたのだ。
我が身よりも、民が……未来を担う子供達が生きることが出来る、要塞のような街作りを。
そこで守られて欲しいのは、表向きには棄てたシバもいた。無論、国を裏切る好意をして行方不明のままのヒソクも。
ジウが愛するすべての家族をも守ろうとしていた。
だが街の完成を待たずに、回復して目覚めた青龍の加護がないままに――早く事が動きすぎた。