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吼える月
第29章 変現
他の街に残る民の移動もまだであり、子供達が街にまだ残留する者と【海吾】と別れたまま、さらには民が命をかけた街作りが、未完成では意味がないのだ。敵から民を守る術が出来ぬのなら、ただ全滅を待つよりも、テオンの言う通り"攻撃"の方が可能性が残されている。
だが、攻撃力としてあるのは……蒼陵の警備兵の武力と、神獣の力は……ジウに残る少量のものと、血の連なる者が宿すもののみ。防御ばかりに気を取られすぎて、攻撃の準備も整っていない。
ハンの息子サクがユウナと蒼陵に来た時点で、予想以上に国の滅亡が早いことを知った。ハンを超える者が敵なのだということも知った。
その敵が、まっすぐにシバとギルのいる……未来を作る子供達のいる【海吾】にまっすぐ向かってきた。
なにがあっても守らねばならない。子供を……シバを、そして自分のためにずっと影で動いてくれていた、愛する弟を。
未来ある子供を生かすために、してきた"仕打ち"こそが、自分に架せられた罰となる罪。
それに反抗する気はない。
わかっていたことだ。
シバが父と呼ぶはずはないと。
来てくれてありがとうと、泣いてくれるなど。
ありえない。
そう、これは絶対的な不変な事実。
誰も手出しが出来ないもの。
そう、"創った"のだ。
だからこそ、鍵の在処に相応しい。
「さあ、答えよ。殺したくない子供を選べ。
シバか、ヒソクか」
父の想いが、シバに伝わらないことをわかっているからこそ。