この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第6章 変幻
サラの声がひっくり返ると、サクの中でユウナがもぞりと動いた。
そしてサクの上着の中から、サラと視線を合わせる。
「ひ、姫様!!」
サラが見たのはその目と口もとだけではあったが、彼女も黒陵の民ともなれば、ユウナの顔はよく知っている。本当に小さい時は、ハンに連れられて家にも遊びに来たこともあるほど、見知った姫だった。
「ご無沙汰しております、姫様。狭苦しい場所ですが、どうぞごゆるりと……」
両膝を床につけて頭を下げて畏まったサラの前で、既にユウナは目を閉じてしまっていた。
相手がサクの母親であると認識していたのかも怪しい。
「姫様……?」
ユウナの無反応さに訝るサラに、サクは苦笑した。
「ちょっと姫様はお疲れなんだ。騒ぎ立てるな。そして姫様が此処にいることも内密に。あ、それとお袋の白髪染めをくれ」
するとサラの可愛らしい顔が引き攣った。
「し、白髪染め!? なんでそれを……」
「若作りを隠しているつもりだったのか? 蒼陵の高級品を親父経由でジウ殿から仕入れていたくせに……」
「そこまで……!? いやいや、それよりなんで白髪染めと姫様が関係あるの!?」
「ちょっとワケあって、姫様を暫くウチで預かりたい」
さらりとサクは言った。