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吼える月
第29章 変現
 


「……ジウ殿、5を数える。それまでに正直に言ってくれ。ゲイに誰にも勝てるわけがねぇんだ。だったらここは、僅かな犠牲で乗り切ろうじゃねぇか。もしジウ殿が本当のことを言ったら、俺達は助けて貰えると……ここの本物のゲイと約束した。あなたにシバや皆を殺す権利はねぇ」


 脅す相手が変わっただけだと、そう周囲に知らしめたのはサク。


「じゃ行くぞ。5」



「猿、なにやってんだよ!!」

「そうだよ、猿兄さん!!」


「我らの武神将を助けよ!!」


 だがそうした声を無視して、サクは数を数えていく。


「4」


 皆がぎゃあぎゃあ騒ぐだけの中、ユウナだけは違った。

 ヒソクを別の鳥に任せて、憤然とサクの元に訪れる。


「3」


「サク――っ!! なに馬鹿なことを言っているの!! 操られているの!?」


 それにサクは内心、舌打ちした。


「2」


 ユウナを近づけたくないのに、これでは――。


 "姫様"


 ここは神獣の力を遮るものはないというのに、ユウナにはその声は届いていない。媒介となるイタチがぐったりしているためだ。

 それに気づいてイタチを呼ぶが、返事が無い。


 だが、待ちし時は、もうすぐそこにきているのだ。


「1……」


 サクが数え終わった時だった。


 どくっ。


 なにかが脈動して始動する……そんな不可解な息吹を、この場の全員が感じたのは。

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