この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第29章 変現
「……ジウ殿、5を数える。それまでに正直に言ってくれ。ゲイに誰にも勝てるわけがねぇんだ。だったらここは、僅かな犠牲で乗り切ろうじゃねぇか。もしジウ殿が本当のことを言ったら、俺達は助けて貰えると……ここの本物のゲイと約束した。あなたにシバや皆を殺す権利はねぇ」
脅す相手が変わっただけだと、そう周囲に知らしめたのはサク。
「じゃ行くぞ。5」
「猿、なにやってんだよ!!」
「そうだよ、猿兄さん!!」
「我らの武神将を助けよ!!」
だがそうした声を無視して、サクは数を数えていく。
「4」
皆がぎゃあぎゃあ騒ぐだけの中、ユウナだけは違った。
ヒソクを別の鳥に任せて、憤然とサクの元に訪れる。
「3」
「サク――っ!! なに馬鹿なことを言っているの!! 操られているの!?」
それにサクは内心、舌打ちした。
「2」
ユウナを近づけたくないのに、これでは――。
"姫様"
ここは神獣の力を遮るものはないというのに、ユウナにはその声は届いていない。媒介となるイタチがぐったりしているためだ。
それに気づいてイタチを呼ぶが、返事が無い。
だが、待ちし時は、もうすぐそこにきているのだ。
「1……」
サクが数え終わった時だった。
どくっ。
なにかが脈動して始動する……そんな不可解な息吹を、この場の全員が感じたのは。