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吼える月
第29章 変現

 
 ◇◇◇


 ユウナが、突如感じた奇妙な感覚が気のせいでは無かったことに気づいたのは、鳥までもが同時にびくっと反応して、宙で止まってしまったからだった。


「サクの元に動いて! サクを正気に戻さないと!!」


 しかし鳥は近づこうとしない。

 そしてユウナは感じた。


 ゲイを見ても平気だった鳥達が、別の"なにか"に怯えていることを。

 そしてその"なにか"を感じたのは、ユウナ達だけではないことに。

 

 ……風が吹く。強い風が。



「まさか、まさかお前!」


 ゲイの激しい怒気を含んだ声を乗せるように、強まるなにかの力の気配が、あたりに暴風を吹き起こす。

 海が荒々しく逆立ち、ジウの乗る船が大きく揺れているのが見えるが、鳥が進んでくれねば、ユウナがその近くに行くことが出来ない。

 イタチの尻尾を引っ張って見ても、この異常事態がなにを意味するのか、説明が返ることはなかった。以前くったりとした、襟巻きのままだ。



 空が厚雲に覆われ、暗くなってくる。


 鳥たちが一斉に怯えたような鳴き声を響かせながら、風に飛ばされないように、必死にバタバタと翼を動かして空中維持を努めていた。

 この場で暴風の影響のがないのは、ゲイの力に守られて空に浮いているサクとリュカと、そしてゲイだけだ。

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