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吼える月
第29章 変現
 

「お前まさか、……青龍を!?」


 ゲイの声に、ユウナははっとした。


「まさか、サクは……」


 この異変は、青龍の目覚めのせいなのか?

 サクが待っていたというのは、この時なのか?


 だとしたら――、


「ああ、その"まさか"さ。今頃"青龍"は、やる気まんまんさ。玄武に喝を入れられては起きなきゃならないだろう」


 サクはゲイに操られてなんてない。

 リュカのようにゲイに服したのでもない。


「それまでの時間稼ぎさ。船からここに戻るまでの移動手段をもたなかった俺を、ここまで連れてきてくれてありがとうな、あはははははは!!」


 サクはひたすら企図し、その成果が出るのを待っていただけだ。

 時が来るまで、それを悟られまいと喋り続けていただけだ。


 サクは、いつだってサクだった。

 サクはこうと決めた道から、ぶれることはない。

 ハンが、サクの精神を育てていたのだ。


 サクを疑うなんて、自分はどうかしてる。

 そう思ったら、ユウナは情けなくてたまらなかった。



「だったら、青龍の鍵を知るというのは……」

「んなもの俺が知るわけねぇだろう? 信じたのは、お前の勝手だ」


 だけど、青龍が目覚めても、ゲイからの攻撃をどうする?


「許さぬ!」


 途端に、宙に浮いていたサクは落下し、金色の光が無数に放たれる。


「サク――っ!!」



 サクは水色の力を身に纏い、その攻撃を防ぐが、宙に浮くまでの力を使いこなせないようで、海に向かって落下する。


 このままでは――。


「お願い……お願い玄武!! サクを……あなたの武神将をどうか助けて!」



 ぴぇぇぇぇぇぇぇ!!


 ユウナの祈りに応じるように、勇んで猛速度で飛んでくる鳥がいた。

 その顔には、老人のような白い模様があって特徴的だ。

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