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吼える月
第29章 変現
 
 スンユの正体が謎に包まれているにしても、それを相手に戦うジウは元気そのものだった。無事なジウの姿を見てほっとしたシバは、すぐさま安堵した自分に舌打ちした。

 なぜ自分が、安心しないといけないのかと。


 これならばまるで、


――シバ。子供は、親からどんなに縁を切られても、親への愛情は忘れられないものだよ? 

 テオンの言葉通りのようではないか。


 自分がジウに、親だと愛情を感じていると。


――根拠ならある。それはお前が私の息子だからだ。


 あんな言葉を、信じてしまっているのだと。



 シバは両頬を手で叩き、自分に喝を入れる。



「オレに父親は必要ない!

オレはただのシバ。親などいない!」



 すべてを棄てた気でいても……、


――シバ…。よくお聞き。あなたの名前は、お父様がつけてくれたの。


その名前を棄てられないのはなぜなのか、シバ自身気づいていない。




「とろとろすんな、行くぞ!!」



 いつの間にかギルとサクは移動していた。



「本当に口の悪い……」

「お互い様だろ!!」



 そして――三方向から放たれる、三人の力。

 ゲイの結界を破壊し、ゲイの動きを制する鎖となる。


 ゲイが声を上げて青い光から抜け出そうとするが、今度は斜め下の船の上からジウが力を放って、元の場所に押し入れた。

 なにより青龍自らが力を放ち、シバとジウの力も増強されている。


 力に慣れ始めたサクの力も強いものだった。

 ユウナと両親の敵を許せないという思いが、無意識にサクの潜在能力を開花させていく。ハン譲りの才能を拓いていく――。


「ぐああああああああ」


 だがこれだけの力をぶつけられても、動けなくなるだけで、まだ金色の光を放って抵抗する気力を見せられるのが、サクには不思議だった。


 なぜ滅びない?

 
 神獣の力を怖れながらも、神獣に負けぬだけの力の持ち主は、一体何者だというのだろう。


 それが"光輝く者"、だというのか?
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