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吼える月
第29章 変現
「餓鬼が多すぎだよ、これじゃあ……」
「僕達、どこに逃げればいいの!?」
ぴぇぇぇぇぇ!!
ぴぇぇぇぇ~。
恐怖に彩られた大勢の人間の声と、鳥の鳴き声が、この場面を惨劇に繋げていく。
「きぇぇぇぇぇっ!!」
テオンの力が切れても虚構のゲイが乗っていた船を食らい尽くし、それでも尚も空腹を満たされぬ餓鬼共は、歓喜の奇声を上げて飛びかかる。
ゲイの力を受けて、数を増やしさらに身体能力を強化された餓鬼共は、いつも以上に活性化し、重力の問題なく、空中をまるで地面を蹴るが如く移動する。
空が……餓鬼に埋め尽くされる。
空を自在に動けるのは、鳥のみ。その空に餓鬼の群集が取り囲むようにして密集してくれば、逃げ場がない。
サクはそちらに飛ぼうと力を緩めた。
「力を解くではない、汝の玄武の力と我の力が合わさっているからこそ、より強度な緊縛となるのだ」
ゲイの動きを封じていられるのは、そうしたからくりがあったことを知りつつも、それでもユウナがいる空が気が気ではなく、このままだと集中出来ない。
そして、それはシバもジウも同じだった。
「集中せよ!!」
ギルが叱咤するほど、連携は乱れて、反対にその綻びに乗じてゲイが金色の光を強めていく……。
「お前達に情けがある限り、余を縛ることは出来やしない。それともあの者達を見捨てて、余を殺めてみるか。あはははははは!!」
「皆、大丈夫よ、落ち着いて!!」
ゲイの声を打ち消したのは、凜としたユウナの声だ。
その声は気丈なものだったが、恐怖に声が震えていることを感じ取ったサクが、ユウナを守ろうと戦線を離脱しようとした時、ユウナがそれを拒んだ。
「サク、来なくていいわ! ゲイを……根源をやっつけて! あたし達にはユエちゃんがいる! ユエちゃん、笛をお願い!!」