この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第29章 変現
「そうだ!! チビ、笛だ、早く笛!!」
はっとしてサクが声を荒げた。
「用意してるよ~!! ねぇ、鈴は持ってる?」
「無論です、お嬢様。私は決してこれだけは離しません」
「よし、だったら……ユエが止めた餓鬼を、消してね~」
「はい!」
そして聞こえる哀切な音色。
それに応じてシャランシャランと鳴るのは、鈴の音。
鳥を挟んで上下にいるふたりの女が奏でるその音が、餓鬼の動きを止めて餓鬼の存在を薄らがせる。
助かったと、誰もが思った時だ。
ドッガーン。
下から爆発音が聞こえたのは。
それは一度だけではなかった。
まるで並んだ船が連続して爆破された時のように、何度も何度も鳴り響き、白い煙が上ってくるのが見えた。
「あそこは……まさか、浮石で繋がる……蒼陵の街を!?」
ジウの悲痛な声が響く。
「あはははは!! 浮石を連携させていたから、爆破の被害も一段と強くなろう。リュカがよい働きをしてくれているわ!」
瞬間、深みある青い光が、海を滑るようにして広がりを見せ、煙の場所まで波動状に拡がっていく。
「遅い、遅いわ青龍! 今さら助けようとも、すでに皆息絶えておろう。爆破を逃れたとしても、五体満足にはなっておらぬ」
「ひとは、危機を察知できぬほど、愚かでは無いわ。見よ、これだけの者が、汝の攻撃の手から逃れた!」
青い光に覆われた海原。
そこからその光の球体が、ひとつ…またひとつと宙に浮き始める。
それは……人間を守る青龍の力。
無数にある球の数の分、他の浮島に居た蒼陵の民は難を逃れていたのだ。