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吼える月
第29章 変現
 

「そうだ!! チビ、笛だ、早く笛!!」


 はっとしてサクが声を荒げた。


「用意してるよ~!! ねぇ、鈴は持ってる?」

「無論です、お嬢様。私は決してこれだけは離しません」

「よし、だったら……ユエが止めた餓鬼を、消してね~」

「はい!」


 そして聞こえる哀切な音色。

 それに応じてシャランシャランと鳴るのは、鈴の音。


 鳥を挟んで上下にいるふたりの女が奏でるその音が、餓鬼の動きを止めて餓鬼の存在を薄らがせる。


 助かったと、誰もが思った時だ。



 ドッガーン。



 下から爆発音が聞こえたのは。

 それは一度だけではなかった。


 まるで並んだ船が連続して爆破された時のように、何度も何度も鳴り響き、白い煙が上ってくるのが見えた。



「あそこは……まさか、浮石で繋がる……蒼陵の街を!?」



 ジウの悲痛な声が響く。



「あはははは!! 浮石を連携させていたから、爆破の被害も一段と強くなろう。リュカがよい働きをしてくれているわ!」


 瞬間、深みある青い光が、海を滑るようにして広がりを見せ、煙の場所まで波動状に拡がっていく。


「遅い、遅いわ青龍! 今さら助けようとも、すでに皆息絶えておろう。爆破を逃れたとしても、五体満足にはなっておらぬ」

「ひとは、危機を察知できぬほど、愚かでは無いわ。見よ、これだけの者が、汝の攻撃の手から逃れた!」


 青い光に覆われた海原。

 そこからその光の球体が、ひとつ…またひとつと宙に浮き始める。

 それは……人間を守る青龍の力。

 無数にある球の数の分、他の浮島に居た蒼陵の民は難を逃れていたのだ。

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