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吼える月
第29章 変現
リュカを使った爆破は、成功していない。
サクは内心安堵した。
「さあ、どうだ。これでお前の策は尽きたか? 今の蒼陵を我の力が覆っている。これ以上の爆破は、我が認めぬ」
笛と鈴がまだ鳴り響く中、ギルの不敵な笑いに、ゲイは僅かに怯んだ表情を見せる。
「青龍よ、そこまで力を使っていれば、お前の仮初めの身体が爆ぜるぞ? いいのか、本体に戻れなくなるぞ?」
ゲイの言葉に、皆が慌ててギルを見た。
本体に戻れない……、その言葉に剣呑さを感じたのだ。
「よい。我に逆鱗があるゆえに、我の国はばらばらになった。再び民をひとつにするためには、我の国から脅威を無くすのが得策」
ギルには慌てた様子はなかった。
逆鱗の単語に、ジウは唇を噛みしめた。
「民のために、自らの身体を棄てるというのか。たかがひ弱な人間達のために!!」
「それが女神ジョウガの命であれば」
ゲイの煽りに、ギルは動じない。
「ジョウガ!? ジョウガがなにをしているというのだ。お前もわかっておろう、女神ジョウガはこの大陸を……」
「我が信奉するのは、女神ジョウガただひとりのみ!」
ギルが力を強め、ゲイが絶叫を上げた。
「わかってるのか……青龍よ。儀式なしに……仮初めの器を手に入れても、本当の身体が滅んでしまえば、いや、長らく本体から離れているだけでも、お前は神獣ではなく……その"人間"として生きることになる……。その意味するところが」
「ああ。我は次第に力を無くし、この国を鎮護できなくなる。それだけではない。女神ジョウガの命に背く我は、罰則として神獣としての一切を奪われ、結果、この器に定められた人間としての……短く、儚き命となることを」