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吼える月
第29章 変現
未完成といえども、それでも最後までゲイは気づかなかった、完全なる海の要塞都市。未完の部分は、これから蒼陵全体で作り上げることになる。
青龍はその川に変えていたその巨大な体の上に、海底都市を持ち上げ……、そして海に潜んでいた都市は、初めて太陽の恵みを受けることになった。
陽にあたる海底都市の大地となったのは、蒼陵を護る神獣。
ジウ達が苦労して作り出した青い輝硬石の原料は、青龍の逆鱗。その持ち主である青龍にかかれば、壁の存在があっても、外界とを遮る壁の色を透過することが出来た。
逆鱗は強さだけの象徴ではない。ジウが逆鱗の光輝く場所を偶然見つけていなければ、その場所はただの山肌。逆鱗は青龍の弱点ゆえに、擬態できる不思議な力があるらしい。
もしこの先危機的なことがおきれば、青龍は青い輝硬い石を現わして、海に擬態させ、海底に沈めて守り抜くつもりのようだ。
河川とともに、すべてを包括する"大地"をも司る青龍は、その特質通り、すべての民を包み込むようにして護っていく道を選んだ。
そしてなにより、一番の奇跡――。
ジウに連れられた大人達が、子供達を迎えた。
その中には、ジウの提示した選択から喜んで"死"を選んだはずの大人達が、天に聳(そび)えるような塔の中から生きて出て来たのだ。
【海吾】の一員として、大人顔負けに逞しく育っていた子供達ですら、諦めていた両親を見つけて、【海吾】になる前の子供のように泣きじゃくるが、それを女々しいと咎める仲間はいない。
全員が、親と兄姉と、抱き合っている。
イルヒも泣いている。
皆が泣いて喜んで……、新たな街で感動は続く。