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吼える月
第29章 変現
それが可愛くてたまらないサクは、久しぶりにユウナを抱きしめようと追いかけるが、なにせ皆が見ている前。
「姫様~」
「いやあああ、サク、皆が見てるからあっち行って!!」
「じゃあ皆が見てない時ならいいんですか?」
「終わったらね、働くのが終わったらね!」
サクが"特別"だと指摘されたようで恥ずかしいユウナは、言い捨てるようにして逃げた。
「よおし! さあ、仕事もってこい! 早く終わらせるぞ!」
やがて陽が落ち、全解放された青龍殿で、仕事の終了を告げる宴会が開かれた――。
「しっかし、ジウ殿。俺はてっきり、皆死んでいたと思ってたぞ? だってそういう話だったじゃねぇか。大人の命で、青龍を目覚めさせて加護をえようと……そんな話だったよな、テオン」
サクはほろ酔いだ。
「うんうん! お兄さんが馬鹿だから、そう聞き取ったわけじゃないよ。僕もちゃんとそう聞いた。だから父様が……」
テオンも何年かぶりに久しぶりに酒を飲もうとしたが、イルヒに取り上げられた。イルヒにとってテオンは、見かけ通りの未成年の祠官…らしい。
「テオンはひとこと多いんだよ。だけどテオンがそう言うのなら、やっぱり俺達は嘘をつかれたってことか?」
サクは青龍殿の解放された部屋で、テオンとジウと酒を酌み交わしながら、外で大騒ぎする民達を見ていた。テオン曰く、昔の青龍殿も、よく民が集まり庭で宴を開いたらしい。
そして庭の片隅には、テオンの父親の墓碑がある。
きっと皆を見て喜んでいるだろうと、テオンは笑った。
「いや、それが……。私もよくわけがわからず……。あの塔で大人達は確かに命を絶った。そして私はその亡骸を、あの塔に横たえていたのです。
それが……なぜ生きて出てくるのか……」