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吼える月
第29章 変現
「どの程度だよ」
「早くて100年。長くて……500年ほどか」
「ほどって、俺は生きてねぇよ! ……くそっ、ゲイの奴も本気出してくるだろう中で、イタ公の加護なしにどうやれば……」
「ふむ、我もここから動けぬゆえに……。もしかすればの話だが」
「なんだ!?」
「ここより南、岩の国緋陵の溶岩の中に、炎の鳥が住まうという。その鳥の涙が、どんな罪をも赦してしまえるものという。それを玄武に飲ませれば、その贖罪がなくなるか、軽くなるやも知れぬ……」
「可能性はわかった。だが、溶岩の中にどうやって入れというんだよ!」
突拍子もなく難関過ぎる条件を提示してきた青龍に、サクは憤った。
神獣は出来るかもしれないが、こちらは人間なのだと。
「玄武が生きている間、少なくとも汝は、水の玄武の加護がある。火に対抗するは……水」
「その溶岩に、仮にイタ公の加護で入れたとしてもよ、鳥の涙をどうやって手に入れると!?」
大体、炎の鳥が涙流すなど普通の状況ではない。
どうやれば怪鳥が泣くのだと、サクは煩悶する。
「そこら辺は、緋陵の祠官にでも聞けばよい。その鳥を護るのが、緋陵の祠官と武神将ゆえに」
「緋陵の武神将!? ああ、元武神将のお袋に聞けばなにかわかったのに!!」
元武神将のサラはもうおらず。
居るのは……。
「お袋、親父と一緒になるために、武神将捨てたらしいからな。果たして、その息子が行っても、歓迎されるかどうか……」
サラの家族。
サラの話では、サラが一番に大人しかったと聞いている。
あれで一番大人しいのなら、家族はさらに猛々しいことになる。
「お兄さん……、問題はそこじゃないかも」
「どこだ!?」
「緋陵は……男子禁制だよ?」