この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
吼える月
第29章 変現
 


 男子禁制――。


 確かにサラがそう言っていたことを、今さらのようにサクは思いだした。

 女だけの国緋陵に、一度男が入り込んだのを見つけられれば、その男を拷問の上に殺したり女の玩具にしてしまう、緋陵は女尊男卑の国なのだと。

 男なら誰もが敬遠する緋陵で、例外として生き残れた男はただひとり。

 それは当時武神将のサラに一目惚れをして、皆の前で「俺の女になれ」と堂々と求愛したハンで、既に最強と呼ばれていたほどハンは強かったから、緋陵の誰もが敵わず。その強さと男前の顔に、色恋沙汰には免疫のないサラはあっけなく陥落して、武神将の座を捨てるほどにハンに熱烈に恋してしまったのだと。


「お兄さん、女装するの?」

「するわけねぇだろ!」

「だったら、どうするのだ、サク殿」


 サクは歯軋りをした。


 それでも、イタチを見捨てられない。

 イタチは、こうなるのを覚悟して、この国を……自分達を救ってくれたのだ。それを無碍にするのだけは、自分自身が許せない。

 イタチは、あんな小動物の体をしているのだ。

 そうさせてしまったのは、自分のせいだ。

 自分の中の先住者が、まだ動き出す気配がないのは、イタチが抑えてくれているからだ。

 イタチが眠りに入り玄武の力がなくなったら、自分もまた、危機的状況が現れる。またあの命を蝕む邪痕が現れる。

 そうなってしまったら、ユウナは――。


「行く」


 ハンは、ジウに自分達の身柄を託した。

 ゲイを撃退した青龍が降臨するのなら、ここは安全かもしれない。だがそれは、安穏と出来る立場であればのこと。


 イタチの危機に、じっと黙ってなどいられない。


「方法はあるの、お兄さん!」

「ない。だけど現地に行けば……」


 反対したのは青龍だ。


「汝、緋陵の朱雀を甘くみておるな? 無鉄砲に侵入すれば、激情家の朱雀の怒りの炎が汝を焼き尽くす。……今の玄武なら、炎を払えまい」

「それで溶岩に入れって!?」


 サクは泣きそうだ。

 元気なイタチがここにいたら、情けないと長い尻尾でぴしぴし叩いてから、苛酷な鍛錬を申しつけただろう。
/1627ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ