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吼える月
第29章 変現
「ごめんなさい、もう駄目。我慢できない。シバとサク、凄く気が合うわよね」
「「どこが!!」」
声が被り、ふたりは左右を向いて舌打ちする。しかも同時だ。
「……なぁシバ」
やがてサクが、真剣な声を出した。
「俺はこれから、テオンの力を借りて姫様と緋陵に行くんだけどよ」
「ええええ!? なんで緋陵に!?」
ユウナが驚いて聞くと、サクはイタチを回復させるためだと言った。
「溶岩の中にいる炎の鳥の涙を、イタ公に飲ませないと、大変なことになるようなんです。青龍が言うには」
「え……なんの涙ですって?」
「溶岩の中にいる炎の鳥、です」
「……冗談よね?」
「冗談に見えますか、この顔」
「見えないから、困ったわ……」
「大丈夫、俺がいます」
どさくさ紛れて、ユウナをぎゅううと力を入れて抱きしめると、シバが手を伸ばして、サクの腕を抓り上げた。
「いてててて!」
「まあ、お前の頭ならその炎の鳥とやらの妖しげなものに近づくことすらできないのはわかった。テオンはかなり頭がいいというか、知識が豊富なのは認める。だけどなんでそれで、なったばかりの蒼陵の祠官を連れて行くんだ」
「青龍自らのご指名。その炎の鳥だかの涙で、イタ公を回復できなきゃ、蒼陵の祠官を認めないってきかなくてさ…。まあ俺としては、あいつの知識量は助かるんだけど……。それで、だ。
……シバ、お前も来るか?」
シバとユウナは、驚いた顔をサクに向けた。
サクの顔は真剣だった。
「俺達と行こう」
サクは思い出していた。
――サク殿、シバなのですが……一緒に連れてやっては頂けないだろうか。
それはジウの言葉だ。