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吼える月
第29章 変現
――この国に縛られていては、シバが……生き辛いと思うのだ。シバは"光輝く者"。この国に受け入れられても、それだけではシバの人生を狭めてしまう。シバを……堂々と、強く生きさせたいのだ。
ジウは土下座した。
――サク殿。これはご相談ではなく、頼みだ。せっかくハン殿が私を頼れと申してくれたのに、面目ない。今蒼陵は、いつまた真実のゲイが攻めるか危険な状況にある。こちらとしてもイタチ殿の回復を真に願っている。だからこそ、シバを連れていっては下さらぬか。青龍がテオン様をというのなら、私の代わりにシバを。
――シバの力は必ず役に立つ。それに玄武と青龍の力が混ざれば、その力が強固になることも証明されている。
だがサクは言葉通りにはとらなかった。
――……ジウ殿。もうひとつ、思惑があるだろう? ……青龍の鍵。それを守るためじゃねぇか?
嘘をつけないジウは汗をかいた。
――シバは鍵なのか? ……命、ではないよな。
「……サク?」
気づけばサクの顔を、ユウナが覗き込んでいた。
「ああ、すみません。ちょっと酒でぼーっとしてしまったようです」
「……それは、酒が入ったからの与太話か?」
シバの声は堅い。
「んなわけねぇだろ。テオンもくるんだ、お前もどうだと誘ってやってるのに、嫌ならいいよ、嫌なら。はい、姫様帰りましょう。酒とか持ち出して、こういう…人の好意を素直に受け取らない奴は……」
「……てくれ」
「あ?」
「……明日まで、考えさせてくれ」
頭から拒絶するわけではないらしい。
「俺達、明日朝早くに出るぞ?」
「ああ、それまでに決める」
サクとユウナは顔を見合わせた。
誘ってみたが、協調性のないシバなら絶対的に拒否するとサクは思っていたが、シバがこの国にいづらいというぼやきを盗み聞きして、複雑な心境なんだろうと察した。