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吼える月
第29章 変現
「……なんですか、それ……。酔っ払ってます? それとも……餓鬼の真似とか?」
身体から緊張は解けたが、ユウナは女として恥ずかしくなり、眩暈を感じてよろけた。
「姫様……? ああ、立っているのが辛いんですね。では失礼して……よいしょ」
「……っ!!?」
サクは後ろから、両手でユウナの尻を持ち上げるようにしてそのまま後退し、ポスンと寝台に座った。
「では座ったまま、ゆっくりと"いい話"して下さい」
寝台に座っているのはサクだけで、ユウナはサクの膝の上に居る。
座っていることには間違いないが、立っている時よりもサクに触れる部分が多くなり、ユウナは尻をずらしたり足を動かしてサクと少し距離を作ろうといるのだが、サクがユウナの腹に回している手をくっと引き寄せられれば、逃走は振り出しに戻る。
「なんで……逃げるんです?」
頭上にサクの顎が乗った。
「傷つくじゃないですか……」
頬で頭をすりすりしながら、その手はユウナのすべすべした頬をさすっている。
あちこちに分散しているサクの熱に蕩けそうになり、ユウナは話題を変えようとした。
「サク……」
「なんですか?」
「お酒臭い」
そう、近くで感じる……これはサクには珍しいことだ。
「飲みましたからね」
なんでもないというように答えて、わざとはぁぁぁと酒気を帯びた息まで吐いてみせる。
「酔っ払いは嫌」
「………」
ぴたり、とサクの動きが止まる。
吐こうとした息を飲み込んだようだ。
「ハンはよく飲んでいたみたいだけど、サクはお酒が好きなの?」
「あまり……」
「そうよね? なのになんでそこまで飲んだの?」
羽目を外すなと言っているわけではない。
サクがここまで酒臭くなっているのが、珍しくて、単なる好奇心だった。
だがサクは言い淀む。