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吼える月
第29章 変現
端的な言葉だと逆に伝わりにくいなら、きちんと説明しよう。
今感じている"好き"が、どんな種類のものかを。
伝えたいのは、サクがくれる"好き"と同質だと言うこと。サクの勘違いにさせてはならない。
「サク。あたしの好きは、サクが言う好きと……」
伝えたい言葉が、まだ半分にも満たない……その時だ。
ずっきーん!
ユウナの身体に、脳天から足先までずきんと激しい痛みが走ったのは。
「サク、と……同……」
ずきっ、ずきっ。
言葉にしようとすれば、疝痛は激しくなり、ユウナは堪えきれず口を噤んで、その場に突っ伏してしまった。正確には、起きていられなくなって、倒れたのだ。
黙れば少し痛みが楽になるようには思えたが、痛みがなくなるわけではない。喋ろうと無駄な力を入れなくてもいいから、そう思えるのかもしれなかった。
ずきっ、ずきっ。
どうして……。
もう少しなのに……。
そう思えど、ユウナは激痛に耐えるので精一杯だった。
ずきっ、ずきっ。
「姫様? どうかしました?」
上から、心配するサクの声が聞こえてくる。
サクにしてみたら、ユウナが恥ずかしがって俯せに倒れてしまったようにも思えるのだ。まさか、苦しんでいるとは思えない。
サクには、サクに褒美をとらせるために、ユウナがサクを喜ばせようとしているように思えていたから余計、ユウナの興奮じみた行動の先が予想出来ない。自分に気があるように思えても、それは酒が見せた幻覚かもしれない。まさか褒美に、本気に身体を差し出す気では……などと、あれこれ考えるサクは、ユウナが眠ってしまったようにも思えた。