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吼える月
第29章 変現
――姫様、俺には"殺されない"自信があります。
それは、青龍を目覚めさせるという企図があったからだが、それを成功させるためには、ユウナを完全に逃がすリュカの協力も必要だった。その協力を見越して、わざとリュカに言ったのだ。リュカの協力があれば、死ぬことにはならないと。自分も、ユウナも。
意味するところを悟って、リュカは短く髪を切ることで、抗えない笛の力のためにユウナを連れられない"言い訳"にした……サクは、そう思っている。
リュカは、きっとゲイの手から……今度はふたりが逃れられないと踏んでいたのだろう。だから事前に動こうとして、逆にゲイに悟られ、拘束されてしまった。ユマをぶつけてゲイの相手にさせている間に、ユウナを助けようと拉致をして、そしてゲイの食指を向けさせないような暴挙に出たのだと。
そして、ユウナの安全を第一に考える自分の企図に、協力してくれたのだ。
リュカと自分には、まだ言葉なくても察しあえるだけのものがある。
甘いと言われようが、黒崙で鎮呪しているサクに背を向けて、中央の兵士から護ってくれたリュカを見てから、サクはそう信じていた。
リュカの基幹は変わらないのだと。
そして――。
サクは……浮島の爆破から逃れた民達に、リュカの様子を聞いていた。本当にゲイの残虐な命令を遂行していたのか、それがひっかかったからだ。
民はこう言った。
――突然に銀色の髪の男が現れて、とにかく逃げろと、すべての浮島を走って叫んでいたんだよ。光輝く者のいうことだから聞こうとしない連中ばかりだったが、あの銀色の男が浮島一番の屈強の男を簡単にのしてから、皆が怯えた。散り散りに逃げようとする我々に、あの銀色はこう言った。
"これから、この浮島を爆破する。あなた達には、新しい街が用意されている。そこに移りたくない者は、この火薬でこの浮島と共に滅びるがいい"
――どこから用意したのか、大量の火薬を設置し始めて、皆が怯えて……男が言う場所にまとまったんだ。そうしたら爆破の直後に、身体が浮いて…。